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謎の街 クルンテープ

エアコンバス

エアコンバス

バスの係員

バスの係員

エアコンなしのバス

エアコンなしのバス


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本日お届する海外旅行情報は「謎の街 クルンテープ」でございます。

先だっての記事である誘拐未遂事件から遡ること2週間ぐらい前。

当時、私は長期の予定でバンコクに滞在していた。年齢は、20歳。盛んな年頃。

滞在場所は、ビクトリーモニュメントから歩いて5分ぐらいのアパートに間借りさせてもらっていた。

当時はまだ、バンコク市内に鉄道や地下鉄などはなく。

鉄道についてはあったのだが、主要都市を結ぶ長距離移動目的の鉄道しかなかった。

市内を移動する目的の足となる交通機関は、バス、タクシー、トゥクトゥクのみ。

あとは、バイクタクシーもあったかな。

バイクタクシーは、危険すぎて利用したことはなかった。ノーヘル二人乗りで、猛スピードですり抜け等、とてもじゃないが無理。

私が主に移動に利用していた交通手段は、バス。

行き先表示番、車内アナウンスの全てがタイ語。

路線図もタイ語。

バスがどこへいくのか、どこからきたのか全く分からない。

だけど、何回か利用する内に分かってきたことがある。

まず、乗り降りについては、ドアが開いていればバス停やバス停じゃないところからでも乗れる。

乗車すると係員が料金回収の細長い筒(中に小銭が入っている)をジャラジャラさせながら近付いてきて、料金を払い、切符みたいなものを受け取る仕組み。

料金は激安で、エアコンなしの場合、2バーツとか3バーツぐらいだったと思う。

エアコン有りで、7バーツとか、それぐらいだった記憶がある。

で、私がもっぱら利用していたのが、エアコンなしのバス。

これには、理由があって。

エアコンが無いのでドアが開きっぱなし。

だから、いつでも乗れて、いつでも降りられるので、私にとって都合が良かったのだ。

この、いつでも降りられるというのが、タイ語の分からない自分にとって、めちゃくちゃ便利だった。

ドアは開きっぱなしなので、バスが止まれば自由に降車できた。

一応、日本のバスみたいに、降車ブザーがついていたと思うのだが、タイの現地人は自由に乗り降りしており、郷に従えの精神で私もタイ人と同じように利用していた。

そもそも、行き先の分からないバスに乗っているので、目的地の近くになったら、信号待ちや渋滞中など所構わずに降りるというシンプルな方法で利用していた。

ただし、これがエアコン付きのバスになると、現地人ではない外国人の場合、とたんに乗り降りのハードルが上がる。

降車ドアが閉まっているので、降車するにはアナウンスを聞きながら自分でボタンを押さないといけない。

エアコン付きバスに乗ってて、一度変なタイミングでボタンを押したら、「そこで、押すの!?」みたいな空気になって、それ以来ボタンに対するトラウマができてしまい、エアコンなしを主に利用するようになった。

そして、バスの行き先だが、結構頻繁に利用していた経験上、そんなに遠くへ行かないということも分かった。

ていうか、そんなに遠くへも行かなかったのだが。結構な時間乗っててもいつも知っている場所を走っていた。

なので、結構安心してバスを利用していた。

ところがである。

当時、滞在場所に近いビクトリーモニュメントから徒歩で、エメラルド寺院や王宮へ観光目的で頻繁に通っていた。

特に目的はないのだが、エメラルド寺院はすごくきらびやかで、お気に入りの場所だった。

その日はそこから徒歩で、バンコク中央駅のそばにあるチャイナタウンに向かおうと思っていた。

エメラルド寺院からだとバンコク中央駅の手前にチャイナタウンはあった。

ただ、その日は、すごく暑い日で。といっても、毎日とても暑いのだが。

暑さに耐えきれなくなり、エアコンバスで移動しようと思いたち、近くにあったバス停でバスを待つことにした。

エアコンバスは、バス停にいないと乗れない。バス停以外でも手を挙げれば停まることもあるが、バス停だとまあまあ確実に停まる。

まあまあというのは、どういうシステムなのか、結構停まらなかったりもする。運転手が気づいていない場合もあるっぽかった。

で、エアコンバスは私の記憶では、当時2種類あって、新型車両できれいなバスと旧型のぼろいバス。

料金も新型車両の方が若干高めだったかな?という記憶。

なので、新型車両の方が空いていて席に座れる。旧型バスは、ほぼ座れないことが多かった。

その日は、なぜか疲れていたこともあって、座席に座ってしばらく涼みたいという欲求が勝り、何台か旧型エアコンバスをやり過ごしていた。

しばらくすると、来た!

ガラガラの新型エアコンバスが!

手を挙げて、バスを停め、エアコンがガンガン効いた車内へ乗り込む。

天国だった。

ところがである。

このバス、まったくどこにも停まらないのである。停まる気配すらない。

エアコンバスの場合、バス停で手を挙げてバスに乗ってくる乗客がいて、そのタイミングで降りていたのだが。

今回も、しばらく走ったところで、乗車する人との入替で降りようと思っていたのだが、このバスに限って、誰も停めない。

次第に焦りが。

私の焦りとは裏腹に、さらにスピードを増していく新型バス。

乗った時から、この時まで、乗客は私一人。

しまいには、バンコクの喧騒を抜け、人家が殆ど無い道を走り続けるバス。

方角的には、西に向かっている。

私の不安はMAXに。

時間も相当経過している。2時間近く走っているはずだ。

人里のないところで途中下車するわけにもいかず、ズルズルと時間と距離だけが過ぎていく。

エアコンが効きすぎて、だんだん寒くなり、我慢の限界に近づく尿意。

すると、バスのスピードが落ち、バスが右折すると、なんだか怪しげなロータリーにバスは停車し、プシュゥ~という音とともにドアが開いた。

車内にいた係員の女性が、ここが終点だといわんばかりのジェスチャーで、降りろと私に指示をする。

日本語で「ここは、どこ?」

もちろん通じている気配はない。

「クルゥテーッ」

「えっ!?何!?」

「クルゥテーッ」

「クルッテー!?」

「クルンテープ」

「ク・ル・ン・テ・ー・プ!?」

そうだというジェスチャー。

クルンテープという場所らしい。

というか、私のここはどこ?という言葉は通じていないから、クルンテープという言葉の意味が分からない。

とりあえず、早く降りろというので、バスから降りると。

地面は全て土。舗装路は全くない。

ロータリーを囲むように、幾つかの商店が並んでおり、突然降り立った知らない人を興味深くジロジロ見る人々。

なんちゅうとこへ来てしまったんだ!!

全然場所が分からない!

もはや恐怖である。

無情にもバスは、私を降ろすと、クルンテープと何回か叫んでどこかへ行ってしまった。

当然、当時は携帯電話なんてない。

さらに、公衆電話もない。といっても、電話する先がないのだが。

かといって、電話する先があったとしても、ここがどこなのか伝えられない。

やけくそで。

「ここは、どこですかっーーーー!!」

と日本語で大声で叫んでみた。

すると、私の周りを囲み遠目で恐る恐る私を見ていた子供たちが、なぜか大爆笑。

もう一度。

「ここは、どこだっーーーー!!」

腹をよじって笑う子供たち。

なぜだか、私も急に可笑しくなり。子供たちめがけて、追いかけっこの要領で走り出す。

キャーキャー言ってはしゃぎ、逃げまどう子供たち。

そんなこんなで、子供たちと遊んでいるうちに日が暮れてくる。

バスが来たら乗れるようにと、ロータリーから離れずにいたのだが、バスは来ない。

今日は、ここに野宿だなと腹を決め、ロータリーにあるベンチをベッドにしようかなと考えていると。

今度は、子供たちの代わりに大勢の犬が。。。

あきらかに、飼い犬ではない雰囲気。野良犬!?

野犬だ!

遠巻きに私を野犬達が囲っている。その数、20頭以上。

野性味があふれすぎている瞳で、私に徐々に近づいてくる犬たち。

ほんの数十秒でさらに増えている。

底知れぬ恐怖が私を襲う。

ロータリーを囲むように店を開けていた商店もほぼ閉まっている。

ロータリーを挟んで自分の正面にある1軒だけ空いている商店へ助けを求めようとしたが、そのロータリーには10頭近い野犬の群れ。

もはや、いつ襲いかかってきてもおかしくないテンションの犬たち。

これは、ヤバイ。マジでヤバイ。食われる。

近くに武器もないし、例え武器があっても、これは無理だなと思ってあきらめかけていたところ。

なんと、新型バスがロータリーに!!

おおおおーーー!!助かった!!

先ほどとは違うバスの係員が。

「クルンテープ!クルンテープ!」と叫んでいる。

クルンテープって何だ!と思いながら。

私も「クルンテープ!」と叫んでみる!

係員も「クルンテープ!」と小気味良く応答する。

とりあえず、この場を大至急で去らなければならない。

急いで、バスに乗り。料金を払う。25バーツぐらい取られたと思う。

この期に及んで高いから降りようかなと思いながらも、命の終わりを迎えそうになっていた自分にとっては、安い運賃だと自分を納得させ、この謎の街クルンテープを後にする。

後で、分かったことだが。

クルンテープとは、タイ語でバンコクの事を言うらしい。

バンコクで知り合った、日本人バックパッカーが言うには、最初にバスを降りるとき、おそらく係員は、間違えて乗ってきたであろう外国人に、バンコクへ戻るから一度降りて料金を払えとのことだったのではないかと思うと。

なるほど。

そういえば、いつまでもクルンテープって叫んでいたなと。

それにしても、あの町というか村はどこだったのか。

当時、誰に聞いても分からなかった。

そして、今もってあそこが、どこだっのか分からない。

謎の街のままなのである。

おわり