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バンコクで誘拐未遂

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本日お届する海外旅行情報は「バンコクで誘拐未遂」でございます。

今から、24年前ぐらいのバンコクでの出来事。

今でも思い出す度に、ぞっとする体験。

バンコクの繁華街を貫くシーロム通りと平行に走る、スラウォン通りを歩いているときのこと。

シーロム通りとスラウォン通りの間には、有名なタニヤ、パッポンがある。

当時私は20歳。色々と盛んな年頃。

スラウォン通りをメコン川方向に向かって、目的もなく歩いていると。

後ろから、現地の女の子に声をかけられた。

「ワタシ ニホンゴ ベンキョウシテイマス。コンド ニホンノ ダイガクニ リュウガクシマス。」

何事かと後ろを振り返り顔を見ると。これが、めちゃ可愛くてスタイル良しのリトルマーメイドちゃん!

「ニホンノ コト イロイロト オシエテホシイ。チカクノ カフェヘ イキマセンカ」

「オッケー!」

かぶり気味で即答する私。

いろんな妄想が頭をよぎる。あんなことやこんなことが。

繰り返すが、盛んな年頃。

そのリトルマーメイドちゃん、あえてアリエルと呼ぼう。

アリエルが、積極的に私の腕に腕を絡めてくる。そして、甘い香りが。

なんということでしょう!

二人で腕を組んだ状態で、私は夢見心地のままスラウォン通りの突き当たり付近にあったカフェに二人で入る。

向かい合って座り、テーブル越しに手を握り合い目を見つめあう二人。

アリエルの話はとめどなく続いているが、私は完全に上の空。

どんなことになってしまうのか、中学生並みの妄想で頭がいっぱいに。

すると突然、アリエルが。

「オカアサン モウスグ ムカエニクル ワタシノ イエニ イキマショウ」

ん!?

何?何?

私の手を引いて、カフェを出るアリエル。

と、同時にカフェの前に止まる白い日本車。

「サワディーカー」と、割と美人な年配の女性。

アリエルが、あれが私のお母さんと教えてくれる。

戸惑うなか

「シンパイナイヨ ノッテ ノッテ ダイジョブ」と後部座席に乗せられる私。

アリエルは助手席。

私は、運転席の後ろ。

そして、私の隣には、なんとこれまたアリエルより可愛い女の子が座っているではないですか!

スタイル抜群の超ミニスカート。悩殺です。

すると、アリエルが私の妹と紹介してくる。

さっきまで、警戒していた私でしたが、悩殺ミニスカートとグラマラスなバストに完全にノックアウト。

警戒心ゼロメーター。

逃げちゃだめだ。

逃げちゃだめだ。

アリエルゥゥゥゥ!!!!

暴走男と美女3人を乗せた車はシーロム通りをラマ通りに向けてゆっくりと走っている。

その間、妹は、どんどん私に近づいてきて、その露わになった太ももを私の太ももに密着させ、
腕を絡め、あろうことかグラマラスなバストも押しつけてくるではないですか!

さらに、何故だか分からないけど爪切りもしてくれます。

アリエルが

「ソゴウ イコウ アナタニ Tシャツ カッテアゲル」

そう、24年前、バンコクにはそごうデパートがありました。

なんで、爪切り?なんで、Tシャツ?と疑問だらけに思いながらも、白い日本の車は、日本のデパートへ向かって走っている。

すでに相当私の体に密着している妹から、何とも言えない甘美な香りが濃厚に鼻腔と理性を刺激してくる。

暴走継続中で、完全に理性を失いかけそうになったとき。

前の週に、バンコクで知り合った日本人バックパッカーとの会話を何となく思い出す。

その彼が言ってたことは

「最近なのか、昔なのか、都市伝説なのかは、分からないけど。
 ここバンコクで、外国人の誘拐が流行っているらしいよ~。
 誘拐されて、女の子は売り飛ばされて、男は臓器とか。
 怖いよね~。
 手口は、色々あるみたいだけど。
 きっかけは、全部女の子が絡んでるらしいよ~。」

この国以外でも、そういう話は聞いたことがあるから、気をつけないとなぁ、ぐらいの感じでその時は聞いていたのだが。

もしかしたら、今、俺に!?

その時が来てる!?

ま・さ・か!?

目の前に、そごうが見え、車は立体駐車場に入っていく。

暴走モードは終了し、完全に警戒モードになっている私。

逃げるなら、このそごうの中でしかないと。

車は立体駐車場の5Fに停まった。

私は、非常口やら、逃走経路となりそうな箇所を記憶していく。

車が駐車スペースに収まり、車を降りる時に確信した。

これは、まちがいなく誘拐だと!

まず、私の腕で、妹のバストを強く押してみた。

柔らかな感触を期待していたのだか、思ったより固かった。

低い声で、うっとうめき声。

降車すると異常に背が高い妹。私の身長176cmと同じぐらい。タイの女の子でそこまで背の高い子は、あまり見かけない。

腕を組む力が異常に強い。

そう、妹は間違いなくおかまちゃん。今で言うとニューハーフ。当時、ニューハーフという言葉は無かったと思う。

腕を組んでくる力が尋常じゃない。あきらかに、お前を逃がさないぞと言う意思を感じる力。

ヤバイ!これでは、振り切れない。

先頭に、母親。妹に腕をロックされた私。後ろに、アリエル。

見事なフォーメーションである。

そのフォーメーションのまま、立体駐車場から店内に。

その頃、私は恐怖で心臓がバクバクになり、妹に気付かれはしまいかとビビっていたのだが、幸いにも気づいている様子は無い。

ロック状態で店内を歩いている最中にも、脱出可能な場所は無いかと血眼になって探していると。

見つけた!

トイレ入り口の横に、非常口がある!

あそこしかないと決断し。

妹に、トイレへ行きたい旨を伝えたが、ノーレスポンス。

ていうか、この妹最初に会ったときから一言も言葉を発していない。先ほどの低い声でのうめき声だけ。

アリエルに、トイレへ行きたいと告げると。

妹も一緒についていくと。

トイレぐらい一人で行けるよと言うと。

「アナタガ シンパイ ダカラ」と。

良く言うよ。ここまで来ると、この女?どもの顔が悪魔に見えてくる。

妹よ。覚悟しとけ!

ついてくるなら、徹底的にやってやる!

腹は決まった。

いざ、トイレに入り、私は、用を足すフリをして小便器の前に立つ、私の後ろにピッタリと立つ妹。

妹よ、もっと近づいてこい。

用をたす音がせず、さらに長いことで不信感が募ったのだろう。

さらに、近付いてきた瞬間。

渾身の力を込め、反動をつけて頭を後ろに思いっきり振った。

ぐちゃっという感触が、私の後頭部に伝わる。

妹の顔面に、私の後頭部が思い切り炸裂していた。

妹の鼻からは大量の出血。手で顔を覆い、うずくまる妹。

さらに、上から妹の後頭部を足でふんづけるように蹴りつける私。

完全撃破!

悪いと思ったが、自分の臓器をバラ売りにされるぐらいなら仕方ない。

急いでトイレを出て、素早く周囲を見回したが母親とアリエルの姿はない。

わきの甘い奴らめ!

非常口のドアを開けると、立体駐車場だった。

ダッシュで、5Fから1Fまで車のとおる道を駆け下り、外に出た。

そごうが見えなくなるまで走り続け、近くにあったバス停から、バスに飛び乗り。

じゅうぶん離れたと思える場所で降車した。

恐怖と緊張感で、しばらく動けなかった。

相変わらず心臓はバクバクしている。

タバコを持つ手が震えている。

今になって思う、あれは誘拐だったのか、それともムフフだったのかと。

誘拐するにしては、脇が甘い。あそこで、そごうへ行ったのは何だったのかと。

そごうへ連れて行かず、彼女たちの自宅へ連れて行けば間違いなく成功していたんだと思う。

今となっては、彼女たちの思いを知ることはできないが。

ただし、男同士?の戦いをしたことで、間違いなく自分自身のトラブルは回避できたのだと。

そして、これだけは言える。

海外で、現地の人に拙い日本語で話しかけられ親切にされるとき、間違いなくトラブルはある。

ましてや、色仕掛けが絡んでいると尚更だ。

そんな話はごまんとあり、自分も注意をしていたはずなのに。見事に色でやられてしまった。

繰り返すが、盛んな年頃。

そして私は、相手に怪我をさせたこともあり、ましてや誘拐グループの一味かもしれず。

彼女たちが謎の組織に繋がっていて、復讐のために私のことを血眼になって捜索するかもしれないという恐怖心が拭えず。

バンコクを去ろう。北へ行こう!

と決心し、翌日にタイ北部へ移動を開始したのであった。

おわり